21.6.23〜 | 青葉弥生ものがたり〜少年少女〜エピソード2 | |
シーン3 ー少女ー 武蔵に無理やりマネージャーとして入らせてもらってから3ヶ月が過ぎた。 大体体を動かすのが好きなあたしは、見てるだけでは物足りない。 大好きなサッカーを楽しんでいるみんなを目の前に、気がつけば、ぶつぶつと 小声でなにかを言ってたりする。ヤバイ。 先日は椅子に座ったままできるリフティングを三杉くん・・じゃなかったキャプテンに見られて 「驚いた、上手いね」っていわれてしまった。 当たり前よ!だってずっと翼君と遊んでいたんだもん! そんじょそこらの、奴らとは比べ物にならないくらい絶対上手いと自負してる。 あーぁ、あたしもやりたいなぁ・・・。 そーんなこと考えてみんなのプレイをみていたら、誰かの叫び声とともに ボールが次第に大きくなるのが見えた。 あ、ボールだっ!!って思うよりも早く体が動いたのは、やっぱり翼君と遊んでいたからなんだと 思う。 ぱっと状況判断して、ボールを高く蹴り上げる。 よっし!!足元!!足も勘も衰えてない!!!思わずにんまり笑っていたけど、 なんか空気が変わったような気がして練習しているみんなのほうに目を向けた。 う・・・えぇ?みんな見てるっ。 あたし・・変なけり方したのかな?? なんか空気読めてない雰囲気だったような気がして固まっていると、 三杉く・・じゃなくて、キャプテンが隣に来てた。 「やっぱり、すごいよ!君。みんな驚いてたな。それも翼君の影響なのかい? だとすると、翼君っていうのは、本当に上手い奴なんだろうな、とっても会ってみたくなったよ! なんか、わくわくするよ!コレはなんとしてでも全国大会いって翼君にあってみないと気がすまなくなってきちゃったな。マネージャーもほんと大したもんだよ。もったいないな。マネージャーでいるなんて・・あのよけ方とパスの仕方をみたら配置は・・」 三杉・・キャプテンは、興奮とともに、やたらぶつぶつと考えだして、でもなんだか本当にこの人って サッカー好きなんだなぁーって思ったら、うれしくなってしまった。 「ええ!翼君に教えてもらったんです!キャプテン全国・・」 と話しようと思ったら、今度は監督が隣にきていて、 「うーん、青葉!筋があるな!よかったらチーム内練習試合とかだしてやろうか?」 と、とんでもないことを言ってくれた。 「そそそそそんな、こんな男の子ばっかりの中にあたしだけって・・あの・・」 そう、女とか男とかそういうのはあたしも嫌い。けど・・・ 毎日の練習も欠かさず応援に来る 武蔵の・・じゃなくて三杉くんのファンクラブ! あれをバックに誰が戯れられようか!!!! 男の人って、わかってないよなぁーー。 なーんて大人ぶって心の中でつぶやいてみたものの、監督、みす・・キャプテンにそんな風に 評価されて、あたし実は天にも舞い上がる気持ちだった。 サッカーは体育の時間にでもできる。 サッカーのチームの中に女子が今はいないのならば、それは仕方がないことだもん。 あたしは全国大会に武蔵がいってくれるように、マネージャーとしてフォローするのがいいんだって 認められたことで、なんか吹っ切れてしまった。 きっと、あたし、マネージャーとしてじゃなくて、一緒にできるんだって、けど、応援にまわったんだてって認めてもらいたかったんだと、そう思った。 息を吸い込み、声を張り上げる 「みんなーーーーがんばれーーーー」 今度ボールが飛んできたら、ゴールにボールを投げて悔しがらせてやろう!って心に決めた。 シーン4 少年少女ー小学5年ー そう、その日は突然やってきた。 その日は、地区子供サッカー大会の練習試合の日で、かなり全国大会に向けての気合もはいって かなりみんな頑張っていたのだが、なんと、本間君が足を怪我してしまったのだ。 「痛ってーー!」 「大丈夫か?本間?」 「だめだなこれは・・棄権しろ本間」 監督が判断を下した。そして 「今日は控えの選手が・・おっ・・青葉!」 突然あたしに監督が声をかける。 「替えのユニフォームがあるから、今から着替えて来い」 はーーーーーーーーーーーーーーー!!!??? あたしを含めみんなポカーンと口をあける。 「誰か帽子持ってる奴ーー青葉に貸してやってくれ」 「かかかかか監督っ!!あたし女・・バレたらっていうか、無理ですっ」 しーんと静まりかえるその場。 そのとき、クスクスと笑った人が言った。 「もう後半もあと少しだよ、今日は僕もでる。帽子を深く被って楽しくやろうよ、マネージャー」 みすぎ・・ああもうっ!いい加減慣れなきゃ。キャプテンだった。 その声につられたように、みんなが言い出した。 「そ・・そうだよ、三杉さんもでるし、きっとばれないって、だって三杉さんがでたらそっちに目がいっちゃうもんな!ばれやしねぇよ!やろうぜマネージャー」 「あははは、マネージャーだってわかりゃしねぇよ!ペチャパイだもんよ」 「お前それ言い過ぎだって!せめて日焼けしすぎて男か女かわかんねえってくらいにしとけよ」 「そうだ、お前は今日からショウヤだ!!弥生を逆から読んでショウヤ!」いいじゃねーか! いつのまにかショウヤコール!聞き捨てならない不適当言葉を出した奴に、蹴りをいれる。 「信じられないっ・・知りませんよっ」 あたしはなんとなく半泣きだ。その時すっと伸べられた手。 「着替えておいでよ、ショウヤ」 みす・・キャプテンが笑った。 誰が着るのかわからないだぶだぶのユニフォームをきたあたしは、確かに男にも見えた。 それからゲームの楽しかったこと! 一生忘れられないだろう。 みんなで取った一点に、そしていきなり入ってきて結構活躍したあたしに観客も沸いた。 あぁ・・いい思い出になったなぁ・・・・。 それから、幾度かあたしはショウヤとして、サッカーをした。 もちろん、正式な試合ではでないし、めったなことでも出ない。けど。 そして、最後のサッカーとなったその日がくる。 とある練習のときに、胸にボールが当たった。 もう痛くて痛くてたまらなくて・・・。 小5になったあたしには、もう体にちょっと変化がでてきていて、 成長段階を迎えたあたしには、つらかったし、そしてやっぱり無理もあった。 その日を境にショウヤは消えた。 シーン5 武蔵中学2年ーグラウンド・少女ー ふむ。確かに・・胸・・・よね。 昔は少年のようだった平らな胸は、今では柔らかな曲線を 描いている。 たった一年で少年から少女へと早代わりしてしまったときは なんともいえない恥ずかしさと切なさがあったと思う。 3バカトリオを追いかけながら、ちょっと笑ってしまった。 突然ショウヤがいなくなって、その言いにくい理由が、 胸がでてきたから!とは恥ずかしくていいにくいだろう。 胸、胸っていってたら、キャプテンが心臓病であることを知っている人たちにしたら、 同じとも思えるだろう。 でも・・・ちょっ・・・見てたのね。人の胸を!!! やらしーーったらありゃしない!!! あいつらめ!!とっちめてやるんだから!!!!!!!!! 「コラーーー待ちなさーーーい!!」 いつか、大きくなった胸の中にある、大きくなりかけている キャプテンへの想いは、通じるのだろうか。 想いが大きくて胸も膨らんでくるのなら・・ もっともっと大きくなってほしいあたしの胸。 6月の空の下、思いっきりフィールドを追いかけまくった。 少年は、少女になる。 終わり 「 えーっと・・・ちょっとだけ続きがあります。 ちょい大人向けバージョンなので、OKな人のみ ずずぃとスクロールしてどうぞ読んでくださいね! 淳弥生 ー25歳6月ー 「・・・ってそんなことがあったのよーあの頃!まったくやらしーったらないわよね」 今日は淳のバースディ! 試合が終わった後に、何故かドッキリイベント?でディズニーランドに連れて行かれ、やたら硬い表情で写った写真を手にあたしの待つホテルに来た。 どうも、そのまま、いろんなトコロに連れて行かれそうだったのを まいて逃げてきたというから、可愛らしい。 それからは・・ 二人っきりでお祝いしてワインを片手に、ほろ酔い気分になった頃、 昔恥ずかしい思いをした話になんかなっていて・・ 「そうそう、さっきさ、女の子が、花束を持ってきてくれたんだけど、渡してくれるときに、「お誕生日おめでとうございます!!あの、大きくなったらケッコンして下さい!!」って顔を真っ赤にしていうんだよ、可愛くて思わず笑いそうになったけど、この場面は注意しなきゃと思ってさ、ぶっちゃけどう返事していいのかわからなくて、困ってたら、横から石崎が、「三杉はグラマー美人になったらいいよっていってるぜー♪」なんて言ったからもう、大変でさー 「乙女を穢すな!!」ってみんなにフルボッコにされてて、笑ったよー」 「あはははカワイイーー♪んでもって、石崎くんサイテー!! それで、その乱闘の中、主役が抜け出してきちゃったわけ?」 「そうそう、悪いと思ったけど、弥生との約束が優先でしょ」 「ところで、淳はグラマーな人が好きだったの??初耳だわ! 胸・・そうそう胸といえばね!!こんなことがあったのよー」 っていう話から、一番最初の話に戻ることになったんだけど・・。」 「・・・ってことがあったのよね!!!あたしねーーーほんっっと!あの時ほど、男になりたいって思わなかったことはなかったのよ!」 「ふーん、そうかい?僕は君がずーっと女でよかったと思ってたけど」 あたしはあわてて否定する。 「そ・・そりゃ今はあたしだって女でよかったと思ってるよ、淳」 「君がショウヤって言われてたあの頃、君の胸にやっぱりドキドキしちゃってたしね」 「やーーーだぁ!淳もそんな目であたしを・・貴公子のイメージ台無しっ!!それは絶対言っちゃ駄目!!!」 「そんなこといったって・・・ みちゃうでしょ、好きだもん。・・・そして、胸が痛くてもう無理になってやめたときは、やっぱりなんとなくほっとしたよ」 「え?なんで?あたしは悔しかったわよー走るたびに痛いし、ブラジャーなんてつけたくなかったし」 「うん、だから、ほかの奴になんて見られたくなかったから・・ね。今は、もう、それこそ・・・ 独占だけど・・・」 ・・といいながら、淳が顔を近づけてあたしの唇に触れる。 そのまま耳元へ唇はずれて・・ 「成長した弥生サンの胸、見たいな・・」ってつぶやきながら、 あたしを抱きかかえてベッドに雪崩れ込んだ。 「大好きだよ・・弥生」 あたしもよ・・・という言葉は、言えなくなった。 〈終〉 1へ戻る |
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